歯周病専門医による治療
芳賀 剛

歯周病専門医になるための難しさ
当院院長は歯周病学会専門医を取得しております。専門医はまず学会に3年以上所属して指定された研修などを受講します。条件を満たしてから試験や症例提出などを行って認定医を取得いたします。認定医を取得してから臨床経験をさらに2年以上経験しないと専門医の試験を受けることができないのです。長期でそして多数の症例を向かい合った歯科医師だけが歯周病専門医になる事が出来ます。
歯周病専門医は日本の歯科医師の約1%
歯科の専門医の中でも歯周病専門医は群を抜いて難易度が高く、一定以上の技術や知識が必要なだけでなく提出する症例も重要になってくるので日々の診療への向かい合い方、研究をどれだけしてきたかが大きく問われてきます。最終的に症例を元に歯周病学会の審査員の前で症例のプレゼンテーションを行いますが、歯周病の専門医としての資質をすべて審査される事になるので歯周病専門医の数は1300名しか現在のところ存在しません。



学会にて再生療法の発表について優秀賞受賞

リグロスについてのセミナー講師
エムドゲイン(歯周組織再生療法)について
痛みを伴わずに進行する病気で、Silent Diseaseと呼ばれています。痛みが出た時には、症状がかなり進行している事が多い病気です。エムドゲインを用いれば、骨を再生する事ができます。エムドゲインというエナメルマトリックス蛋白を応用する事で、歯周組織の再生を行う事が可能です。処置内容は、通常の歯周外科処置と変わりません。手術時間は60分程度です。局所麻酔下で行います。麻酔の量も通常の虫歯の治療とあまり変わりません。
歯周病について
歯周病とは、歯ぐきに炎症がある状態で、細菌の毒素によって歯を支える骨がとけてしまう病気です。しかし、歯周病はあまり自覚症状がないので気づいていない方が多いですが、 実際は多くの方が歯周病になっているのが現状です。(40代以上の80%が歯周病になっているという統計があります。)
歯周病になっていると、虫歯の治療をしても出血して詰めものや被せものがはずれやすくなったり、麻酔が効きにくかったり、治療後の痛みも出やすいので、当院では、虫歯があっても、虫歯の痛みがなければ、歯ぐきをひきしめるための治療から先に行っていきます。その際、歯磨きのチェックや練習といったことも行います。
歯周病の進行過程
正常な場合

歯周ポケットは1~2㎜
歯周炎

歯周ポケットは2~3㎜
軽度歯周病

歯周ポケットは3~4㎜
中度歯周病

歯周ポケットは5~6㎜
重度歯周病

歯周ポケットは6㎜以上
歯周病末期

自然に抜けてしまいます
危険信号は?
- 毎日の歯磨きで出血する
- 歯肉が赤く腫れている
- 歯肉が何となくゆるんでいる感じがしたりする
- 口臭が続いていて気になる
- 何となくどこか、痛い・かゆい・不快だと感じる
- 歯がぐらつく
- 歯が伸びてきた
- 歯の位置が移動してきた
こんな症状のあるかたは要注意です。
歯周病は最初、痛みを伴わずに進行していきます
ほとんどの人は、歯肉から血が出る。腫れた。
といった自覚症状を感じてからはじめて来院されますが、このような症状があるときは、かなり進行した状態です。
歯周病は歯磨きでは防げません。
毎日の歯磨きをしていれば歯垢の除去はある程度可能ですが、歯石の除去は歯ブラシではできません。
歯石は一度できると歯の周りに軽石のような性状で強固に歯に付着します。
歯周病の治療と予防
プラークコントロール 歯垢を除去する
プラークとは、歯にへばりついた歯垢のことです。歯垢は、細菌のかたまりで、この細菌が歯肉や顎の骨などの歯周組織に炎症を起こします。
プラークコントロールは、プラークを定期的に除去することをいいます。
正しい歯みがきをすることで、プラークは除去できます。歯周病の最大の予防法・治療法は、歯みがきです。当院では、歯周治療の一環として、歯みがき指導を行なってまいります。
正しい歯みがきの方法、歯ブラシの選択、歯みがき剤の正しい使い方などをご説明いたします。

SRP(スケーリング・ルートプレニング)
見えない部分は歯科医院で
歯周病の予防に毎日の歯みがきによるプラークコントロールは欠かせません。
見える部分(歯肉より上の部分)に関しては、日ごろから歯みがきをしていただく必要があります。
一方、見えない部分(歯肉より下の部分)は、われわれ歯科医院の仕事です。歯石は、歯垢がミネラル分を含み硬くなったものです。特に、歯肉の下についている場合も多く、歯ブラシでは取れません。
歯科医院では、歯についた歯石をスケーラーという専用の器具を用いて除去します。これをスケーリングと言います。
また、歯垢はザラザラした面につきやすいので、歯の根の部分を滑らかな形状にしていきます。これをルートプレーニングと言います。歯周病の治療には、患者さんとわれわれが二人三脚で努力することが必要なのです。


歯周病が進んでしまった方のために
歯周外科とは
歯周病が進み、骨吸収が進んでしまった場合、一般的な器具では歯石がとれません。その場合、麻酔をしたうえで、炎症を起こしている歯肉をメスで切り取り、歯の根っこについた歯石をとります。


根気良い治療が必要
歯周病が骨にまで及んでしまう主な原因は、歯垢、歯石です。原因を除去し、適切な処置を行なうことで、かなり進んだ病状も回復する場合があります。指示を守っていただき、根気よく治療を続けることが必要です。
評価
歯周病治療は確認が必要
歯周病治療の流れの中で、大きなポイントとなるのが評価です。評価とは、治療の効果を判定することです。基本的には、最初の診査と同様のことを行い、問題点が改善されたかを診ていきます。
歯周病は全身に影響を及ぼします
歯周病は歯を失う大きな原因です。歯は食べ物がはじめて出会う「消化器」であるだけに歯周病で歯を失うと、からだ全体に大きな影響が及ぶ可能性があります。そして今、歯周病が全身のさまざまな病気に関わっていることが分かってきました。
歯周病対策で健康力アップ

脳…認知症
噛むことが脳を活性化することがわかってきています。噛むことによる刺激で学習能力に深く関わる伝達物質が増えます。
肺…肺炎
“誤嚥性肺炎”とは、食べ物や唾液が誤って肺に流れ込むことで、口の中の細菌によっておこる肺炎をいいます。高齢者、寝たきりの人や、脳卒中の後遺症などで飲み込む力が衰えている人に多く発生しています。
心臓…狭心症・心筋梗塞
歯周病菌が動脈硬化をおこしている血管に付着すると、血管を狭める作用を促進すると考えられています。
すい臓…糖尿病
歯周病は糖尿病を悪化させます。インスリンの活性を干渉し、血糖値のコントロールが不十分となり糖尿病を悪化させます。
骨…骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨の密度が減ってスカスカになり、骨折しやすくなる病気。骨粗しょう症の人が歯周病になると、歯を支える骨が急速にやせてしまいます。
おなか…肥満・メタボリックシンドローム
噛むことが肥満を防ぐメカニズムもわかってきています。“一口30回噛む”ことは肥満予防法として、厚生労働省でも取り上げられています。
子宮…早産・低体重児出産
妊婦さんが歯周病になると、おなかの赤ちゃんが小さく生まれたり、早産になるリスクが高まることが知られています。